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Tell Me
春のある日のお話。
X JAPANが解散したあと、hideは・・・



















暖かい日差しが、桜の木々を優しく包んでいる。
hideはサングラスを少しずらして、その小さな花を眺めた。
砂塵のように、まるで風そのものであるかのようにさわさわとなびき、散っていく。いくら散っても花弁が尽きる事はない。晴れわたった空に映えて、薄紅色の雲のように広がっていく。
そとて賑やかな人の声。
川のそばの桜並木は、毎年花見の客でとても賑わう。しかしhideはその輪のなかに入ることもなく、歩道をゆっくりと歩くだけだった。少し羨ましくはあるけど。
(・・・いいなぁ)
有名になってしまうと昼間、それも人の多い所に入っていく事など出来ない。久々のオフに人に囲まれるのは煩わしいし、こうして桜が見れただけで満足だった。
また春の歌でも作ろうか、と思っていたら------
「・・・あらら」
目の前に少女がいた。
道に座り込んで泣いている。
「どうしたの?」
迷子だろうか、とhideは思った。これだけ人が居ればはぐれてしまうのも無理はない。
少女は頷くだけだった。ほんの少し顔を上げるも、サングラスをかけたhideに怯えてうつむいてしまう。
「いや、おじさん何もしないから。ね?」
何もしないよ~としゃがみこみ、サングラスを外してわざとおどけてみせる。少女は思わず顔を上げ、まじまじとhideを見つめた。
にこっと笑いかけると少しつられて笑って、
「・・・そのかみ、ほんもの?」
「そうだよ?」
「・・・ピンクのかみ・・・」
興味津々にピンクのかみ、と復唱する。
「ピンク好き?」
「うん」
「おじさんもねぇ、こういう色好きなの」
「いいなぁ」
「大きくなったら染めてみたら?」
「・・・うん。やってみる!」
そう言うと少女は明るい顔になり、警戒心の全くない表情を見せた。
hideは少女の隣に座って訊く。
「はぐれちゃったの?」
「・・・そうなの」
「一緒に探そうか?」
「いいの。さっきおかあさんといっしょにに、この道あるいたから」
だからまた通ると思う、と小さく呟いた。
「・・・おじさんはいいの?」
「ん?」
「どこも行かなくていいの?」
「おじさんはだいじょぶだよ」
「はたらいてるよね?」
その言葉に思わず吹き出してしまった。
「・・・・・・いや、流石に、ね」
自分も子供が出来たらこんな風だろうか。こうして可愛い存在がずっと傍に居たら、とhideは。
(・・・でも娘だったらなぁ・・・・・・・・嫁に出すのは・・・)
その前に自分が嫁を貰う訳だが。
風がまた吹いてきた。少女の濡れていた頬を桜の花びらが撫で、何処かへ消えていく。
毎日がこうやって穏やかならいいのに、とhideはぼんやり思った。辛い事を忘れられる日々が続けばいいのに、と。


(・・・YOSHIKI)



TOSHIの苦しみはYOSHIKIを苦しませた。YOSHIKIの苦しみはhideの苦しみだった。全てはあの二人の、あんなに仲のいい幼馴染の軋轢が原因だった。
仲間が去る事にhideは耐えられなかった。しかし、仲間とは言えずっと同じ事が出来ない事実は、時が経つにつれて表面化していく。もちろんhideには他にも仲間がいる。それでもX JAPANの仲間には、到底敵わない点が数多くあった。
「・・・どうして」
何故こうなってしまったのだろう。
いつの間にか嫌な感情が浮かんできた。
・・・このまま時が止まればいいのに。誰もが歩みを止めればいいのに。
・・・そうすれば辛い事から、解放されるのだろうか?今より辛い事は訪れないのだろうか?

「だいじょうぶ?」
少女が心配そうに覗き込んでくる。
hideははっとして少女を見た。直ぐに取り繕うように微笑う。
「・・・大丈夫だよ?」
「ほんとに?」
答えられなかった。
少女が悲しそうな、困ったような顔になる。自分も今、そんな表情なのだろうかと思う。hideは更に弱気になって、子供の頃に戻れたら、とさえ考えた。
ふいに少女が表情を一切消す。思い詰めたようにも見えた。そしてhideと対峙して、こう言った。



「大人になるのってつらいの?」



真剣な声で。
一瞬訳がわからず、言葉が見つからない以前に訊いている意味がわからなかった。はっきりと理解できていないのを示されて、少女は少し失望したような顔をして、単調な声が更に続ける。

「おかあさんがいつもつかれてかえってきて言うんだもん。『若い頃の方が楽しかった。なのに今はどうしてこんな暮らしなの』って。わたしにきこえないようにしてるつもりだろうけど、きこえるもん。『子供は楽でいいわね』ってテレビ見ながら言ったもん。
大人になるってくたくたにつかれること?つらいことばっかでわらえなくなっちゃうの?・・・だからおはな見たら元気になるとおもって、ここにきたいって言ったのに」

少女の声はとどんどん沈んでいった。しかし自己陶酔に似た被害者意識はなく、冷静に大人になることを批判していた。
そしてはっきりとした声で言う。
「そうなるなら、大人になんかならない」
何も言えなかった。
(・・・でも)
否定しなければ。
hideは無意識の内に自分の少年時代を思い出していた。内面も外見も望んだようなものではなかったが、根拠のない希望があった頃。いつか憧れに近づいてやると息まいていた、インディーズ時代の自分の姿。
KISSやJAPANがヒーローだった。確かにあの頃、自分には夢があった。
仲間が出来て別れもあった。困難の壁に何度ぶつかった事か。『シーンを変えてやる』と決意しなければ、何度挫けそうになった事か。
自分はまだ道を進む。
進むうちに蓄積した苦しみは、簡単に拭い去れるものではない。

「・・・でも」
hideは絶対に止まらない。
「・・・でも、大人になれば、自分の憧れた姿に近付けるかもしれない」
そう言ってhideは少女を見た。
少女の眼には疑いの色が浮かんでいる。
「・・・かもしれないってことは、なれないかもしれないってことでしょ」
正論である。
それでもhideは少女に笑いかけた。
「でも、君が努力すれば絶対になれる」
hideはヒーローになりなかった。だからこそ、辛い事があっても進むことが出来た。
「自分の憧れの為なら・・・辛い事があっても乗り越えられるよ」
先に進んだ者として。
後から歩み始める者を不安にさせる事は、してはいけない。
本当なのだろうか、と空に眼を向けて少女は考え始めた。その眼にもう疑いはないhideは安心して、同じように空と桜に眼をやった。
その時だった。
「みかー!!」
若い女性が、女の子の名前を呼びながら走ってくる。
「おかあさん!」
少女も叫んで母親の元に駆け寄る。
「大丈夫だった?」
「うん!!!」
満面の笑みで抱きつき、hideの方に眼を向けて少女が言った。
「あのおじさんがね、いっしょにいてくれたの」
その言葉に母親がありがとうございました、と頭を下げた。hideも立ち上がって「いえいえ」と礼をする。
「じゃあみか、行くよ」
母親がそう言って、少女を花見の喧騒の中に連れて行く。
その間際に少女はくるっと振り向いて、hideに言った。
「また会おうね、おじさん!」
少女の笑顔が眩しく輝いていた。
強い風が沢山の風をさらっていく。

「・・・また会おうね」
そう繰り返して、hideは再び歩み始めた。


















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X JAPAN 小説 | Comment : 2 | Trackback : 0
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Comment

スパイダー

2009/02/24 17:48 ・・・EDIT

  イイ!!!
感動したッッッッ(> <、)
この話イイ!!!(>∀<)/

はっきり言ってファンです,緋壱サンの!!!(照
文章上手すぎ!!!!

(なれなれしくてゴメンナサイ(汗 )

緋壱

2009/02/26 21:59 ・・・EDIT

  熱いラブコールありがとうございます♪

hideちゃんは自分の事を「暗い」とか「ネガティブ」だと言ってましたが、それを乗り越える強さがあったからこそ、優しいヒーローになれたんだと思います。

ずっと愛される人ですよね。


 

 

 

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